アイスワールド   技術本  ジェフ・ロウ

私のバイブルというべき本がこのアイスワールド(山と渓谷社)だ。岩と雪が休刊する少し前、ジェフ・ロウによって登られたオクトパシー M8 が紹介された。当時の道具、技術からすれば衝撃的な写真に目が奪われたが、数年後そのジェフ・ロウによってアイスワールドが発刊された。ジェフ・ロウといえば単にアイスを登るということではなく、すばらしいアルパインクライマーで、エベレスト街道にそびえるすばらしいピークの壁をいくつも登っており、本の中でもカンテガ、クワンデが取り上げられている。今流行のミックスクライミングはいつの間にかボルトが打たれスポーツ化し、スポーツクライマーが台頭しているが、山のミックスクライミングは少数ではあるがやはりナチュラルプロテクションで登られ、本州ではそういうトレーニングを積んだクライマーがすばらしい記録を残している。北海道ではまだまだ少ないが、可能性は十分ある。この本は今も色あせてはいないのだ。

American Alpine Journal  山岳年鑑

American Alpine Journal はAmerican Alpine Club が年一回に出す山岳年鑑だが、最近は写真も増え、世界のトップクライマーの記録から各エリアでのクライマーの記録、新たなエリアの紹介などすばらしい内容が掲載されている。海外を目指すクライマーならば絶対に目を通すべき本である。アマゾン等通販で買える。

Alpinist アルパインクライミング雑誌

ロックアンドスノー、岳人とどうもぱっとしない流行ばかりを追いかける日本の雑誌とは違い、アルパインクライミングとは何か?とそのスタイルをしっかり表現していてくれたアメリカのアルパインクライミング雑誌Alpinist。残念ながら25号で休刊してしまった。復刊したといううわさも聞くが日本に入ってきているのだろうか?

パトロールグローブ  ブラックダイアモンド

知人に薦められ昨シーズン、今シーズンと使っているのがこのパトロールグローブ。もともとスキー用で裾が短いので、古くなったオーバー手袋を切って縫い付けて、雪の侵入を防いでいる。何がいいのか?まず中綿はプリマロフトで暖かい(へたるのが早いのは問題)。革をふんだんに使っており丈夫。掌側も革で、アックスを握った時に生地がずれない。乾燥した海外の壁では快適の一言。国内ではやはり濡れてしまって、一日がいいところ。かなり頑張って二日。長期山行には向かない。テクニカルなアルパインルートにはお勧め。上ホロの壁ではずいぶんと使っている。

目出帽  マーベルピーク

良い目出帽は少ない。そういった中で久しぶりにすばらしいフィット感、あごの部分を上げ下げしても上の生地は目にかぶさってこない立体縫製、凍ってもなんとか維持される伸縮性。マーベルピークの目出帽だ。しかしこれもモデルチェンジをしてしまって今ではありえないほど使いにくい形になってしまった。メーカーはテストをしているのだろうか?目出帽の必須条件は①目の横の部分の生地がクロスしていること。これはあごの生地を上げ下げした時のフィット感を生み、使用時期が長くなっても生地が伸びにくい。②あごの部分の生地を下げた時に目の上の生地が下がってこないこと。これは生地の伸びる方向をうまく利用すればできるはず。③すそから首が出ないこと。この条件をクリアできる目出帽は無いと言ってもいいが比較的ましなのがパタゴニア。モンベルは形はいいが口周りが凍ると生地が伸びきってどうしようもない。

小便ボトル 男性向け ナルゲン

小便ボトルを使ったことがないという人がけっこう多い。そういう人は一度使ってみたほうが良い。冬季においては小便のたびに外に出ていては、テント内は気温が下がるしウェアも濡れる。更に寝ている時にしたくなっても外に出るのは億劫で、そうなると寝ていられない。長期山行、大きな壁、冬季登攀などいかにウェアを濡らさないか、睡眠をよくとれるかが成否の鍵となることも多い。このナルゲンボトルは口が広く用が足しやすい。本体部分を折り曲げれば(使用頻度が多いと硬化してくるので使いにくくなる)寝たままでもできるのである。ただし寝てする場合は一度練習したほうがいいだろう。こぼすと悲惨なことになる。また穴開きには要注意。本体部分はどうもプラティパスより弱い感じがするが、プラティパスは広口がない。ということでナルゲン一押し。

GR1V リコー フィルムカメラ

デジカメ全盛期において冬山ではまだフィルムカメラを使っている。GR1Vはリコーがプロのセカンドカメラとして売り出した高級コンパクトカメラである。強靭なマグネシウムボディ、GRレンズ使用、山ではやはり広角の28mm、絞りも調整可能。イギリス人クライマーのアンディー・カークパトリックやミック・ファウラーも使っているが、残念ながらあまり売れなかったらしく製造中止となってしまった。現在は中古を手に入れるしかない。フィルムは当然ポジを使う。以前はマニュアル一眼レフを持っていっていたがさすがに重いし、操作が大変でこちらに変えた。濡れには気を使うので、長期の際はテントや雪洞内に持ち込まないようにすると結露しにくい。デジカメは撮った写真をすぐに確認でき便利だが、どうもフィルムカメラのような楽しみがない。映写機で写すスライドは、冬のすばらしい景色とクライミングシーンをみごとに再現してくれる。

マホービン 1L 象印TUFF


以前は冬山に普通の水筒を持っていっても気にせず飲んできたが、最近はなかなか飲む気がしない。歳のせいか。そこで0.5Lのサーモスを持って行っていたが、行動中の水の量としては少なすぎる。脱水になってしまうのだ。乾燥した冬の空気は呼吸するだけで体内の水分は確実減っていくし、行動中の汗も脱水の原因のひとつだ。人間は脱水状態になるとそうでない時と比べ、同じ運動では心拍数は1分間で20回程も上がるという話も聞いた。高所でのクライミングはまさにそうだ。やはり重くてもいいから温かい飲み物がほしい。そこで象印 TUFF1L。蓋はプラスチック。重さ0.5kgと水筒と比べれば断然重いが、飲まずに脱水になって疲労するよりは良い。最近のものは真空部分が3mmほどしかないらしい。内蓋のねじ切りは本体外側と噛むので凍りつくことも無い(本体内側にねじ込むタイプは凍り付いて開かなくなることがある)。取っ手はずそうかと思ったが、手袋していると滑るのでやはり有った方がいいと思いとどまった。日本酸素サーモースからも同じスペック位のモデルが出ている。

プラスチックレンゲ スリング付き

この汚いスリング付きのプラスチックのレンゲ。もう10年以上国内のみならず海外遠征のお供をしてきた百戦錬磨のレンゲなのである。なぜレンゲか?軽量化のためパーティでコッフェル1つとした時、少ない食事を存分に味わい楽しむには欠かせないアイテムなのだ。まずはその深さにたくさん食事が乗り(パートナーには一回分が多すぎると文句を言われる)、汁をすくえばまたまたたくさんすくえ心満たされるのである。ただし麺類には弱い。パスタやラーメンなどはいらいらするくらいすくえないが、私は米好きなので米を持っていくことが多いからあまり問題無い。 金属のスプーンやフォークを持ってくる人がいるが、コッフェルが痛むのでよろしくない。やはりプラスチックレンゲなのだ。ちなみに柄についているスリングでぶら下げたことは数回しかない。

ICE PACK (ブラックダイヤモンド) ザック

  なかなかいいザックは無い。そういった中でなかなかの完成度を見せたのがこのICE PACK。BD製品のやわらかいものはダメだというレッテルを取下げてもいいと思わせた。まずは比較的シンプルな作りで軽い。本体はパッキングしやすい寸胴に近い形。メッシュの部分はほとんど無く雪が付きにくい。雨蓋は大きくで取り外し可能で、ウェストベルト(取り外し可)と組み合わせればウェストバックになる。バックルは大きめで手袋をしていても操作しやすい。サイドストラップにもバックル付き(これは重要)。アックス、アイゼン収納システムも使いやすい。背面パットは取り出してビバーク時に使用できるみたいだ(薄くて寒そうなので使ったことは無い)。残念ながらこのモデルは現在生産されていないので、荷上げするところには持って行かないようにしている。
 最近のザックは雨蓋が縫い付けのものが多いし、バックルが小さかったり、細長かったりと、とてもテストしているとは思えないつくりのものが多い。フレームが入っていると背負いやすいが、クライミング時頭がつかえることがよくあるし、細長いザックも同様である。これはと思わせるザックは最近見ていない。

DASパーカ(パタゴニア)  ビレージャケット

以前は震えながら数時間ビレーをしていた冬季クライミング。重くなるからと言ってなかなか受け入れなかったビレージャケットだが、使ってみるとなかなか良い。ビレージャケットがあることを考えてレイヤリングを薄くすれば、アプローチで大汗もかかなくなるしビレー中は暖かい。寒ければ着たまま登ってもいい。DASパーカ(パタゴニア)は約800gと重いが、ヘルメットの上からフードをかぶってもファスナーはきっちりしまる。フロントファスナーは2WAYでビレー中下から開ければロープ操作も邪魔にならない。内側には乾かし用メッシュポケットも付いている。まあまあのお気に入り。各メーカー重さもさまざまで、私はDASしか使ったことが無いので何とも言えないが、ポイントはヘルメット対応のフードか(ファスナーが閉まらなければ意味が無い)。重さはどうか(DASはやっぱり重い)。中綿は化繊かダウンか(濡れる状況が多いのでやはり化繊かな。当然ダウンのほうが暖かい)。500gを切る暖かいビレージャケットがあれば最高だろう。決め手はやはり中綿か。近頃グローブに使われているプリマロフトは気になる存在だ。

ユニバーサルピトン  カンプ

以前シモンから出ていたユニバーサルピトンは優れものだった。先端部はナイフブレードに近い薄さから徐々に厚くなり、ロストアローくらいの厚さまでなってカラビナをかける部分がねじれている(ここがポイント)。これは荷重がかかった時てこによって、ピトンが抜けにくくなるというものだ。どこかに残置したのか随分前に無くしてしまった。久しぶりに注文したら、シモンは無いと言われ(ホームページ上ではあるが、以前と形が違っていた)、カンプを注文することに。う~ん、いまいち。先端が分厚すぎるのだ。入りが悪い。ヤスリで削るべきか。と思って今だ手をつけず。まあこの手のピトンは1本以上は持っていたいところだ。

ペッカー 大   フックピトン


ビッグウォールギヤとして売られているペッカーだが、凍った極細クラック御用達。上ホロなどではクラックに土が詰まっていることが多く、凍り付いていてナイフブレードなどまったく受け付けないことも多々あるが、こいつは入ってくれるのだ。ここぞという時の安心。さすがに消耗は激しく、何度も使うと刃先が曲がったり欠けたりする。ラッキングにワイヤーを使うとウェアに引っかかったりするので、上の穴にスリングをつけてラッキングしている。サイズは大がよろしい。

ルベルソキューブ 確保器あれこれ

ロープ径が細くなるにつれて確保器もどんどんと変化してきた。家にあるものだけで6つ。最初に使い始めたブラックダイヤモンドATC(左上)はこれが3代目。実に使いやすかったがワイヤーがよく切れた。制動を増すために溝型になったATC-XP。さまざまなロープ径に対応するために確保面が回せるシモンのキュービック(下中)。セカンドの確保がロックできるということで画期的だったぺツルのルベルソ初期型(上右)。制動力を増すために段がつけられたルベルソ改良型(上中)。そして更に改良され溝型になったルベルソキューブ(下右)。試して買うということはなかなかできないので、買ってみるといまいちだったりすることもある。ルベルソキューブと写真には無いATCガイド(使ったことが無い)は構造がほぼ同じ。上のカラビナをかける穴の方向が違い、下の穴はルベルソキューブはカラビナが入る(ロック解除が楽か?)。重さはルベルソキューブが軽い。今のところこれで落ち着きそう。

スパイダルコ  ナイフ


山にビクトリノックスのナイフを持ってきている人をよく見かけるが、刃を出すにはツメで引っ掛けて出さなければならない。夏ならそれでもいい。料理にもいい。がアルパインクライミングではやはり手袋をした状態で刃が出せないといけない。スパイダルコのナイフはブレードに穴が開いており、手袋をしていても楽に刃が出せる。切れ味も抜群。波歯タイプならスリングもロープも切りやすい(料理はしにくい)。収納は柄の背中?側を押すと刃のロックを解除できる。写真はレディバグ?というモデルだったか。収納すると5cmほど。首から下げるならスリングではなく、伸びのいいゴムを使おう。引っ張れば自由自在。

ジェットボイル


 アルパインクライマー御用達クッカ-がやっと出た。ジェットボイル。コッフェルとガスヘッドが合体し、片手で保持でき、熱効率よく、コッフェル部分に巻かれたネオプレーンが、結露した水が落ちるのも防ぎ火が消えない。

 まあこれも完璧ではなく、縦長コッフェルなのでバランスが悪く、料理には向かず、大きい鍋も出たがこれは合体しない。同じ容量でもう少し横広なら雪も入れやすいし、調理もしやすくなるだろう。水を入れすぎると沸騰した時に蓋の飲み口(蓋に飲み口の穴が開いているのだ)から熱湯があふれかなり危険。

 熱効率の良さでいえば以前マルキル社のストーミーというのがあり、ハンギングストーブという点では使いやすかったが大きくて重かった。ジェットボイルもハンギングできたらベストだと思い改造したが、使う前にまったく別の発想で純正ハンギングキットが発売。よく考えてるなあ。しかし4800円とは高すぎる。

 まあ今のところ狙いの時はこれかな。

アイコン ヘッドランプ


LEDヘッドランプが出始めてモデルチェンジを繰り返し、ハイブリットなんかもあったが、LEDのみのヘッドランプが主流になってきた。そしてついに3ワット。この強力な照射は今までで届かなかった距離を照らし(ハロゲンなら届くのかな)、夜間登攀では足元も明るく、ルートも明瞭、消費電力も少なく、予備電池が減り、ローソクも持って行かなくなった。その3ワットモデルメジャーどころがブラックダイヤモンドのアイコンとぺツルのミオXP。アイコンはスイッチボタンが大きく、手袋をしていても押しやすい。それに比べミオXPはスイッチボタンが小さいし、集光、拡散がレンズを動かすという手袋をした上での操作性をあまり考えていないようだ。という訳でアイコンを買ったが、なかなか完璧な製品はありません。電池ボックスのネジの調子が悪い。すぐ斜めに噛んでしまうのである。無理に回せばねじ切ってしまいそう。こんなこと壁の途中でやってたら気が狂いそう。まあボタン押す回数と電池交換する回数だったら、ボタン押すほうが多いから仕方がないか。電池は家で慎重に交換しましょう。

スパンティーク スポルティバ  問題発生

かなりの保温性、そして登りやすさ、歩きやすさを兼ね備えたダブルブーツ、スポルティバのスパンティーク。さすがに高所靴ほどの保温性はないが、国内冬季登攀から海外6000m峰の北壁の登攀までまったく問題なしというすばらしいブーツ。以前凍傷をやった私の足では、このブーツ無しではもはや冬壁は登れない。靴ヒモの締め方も実に斬新。アウターにも保温材が入ってる。しかしまったく問題ないかといえばそんなことはなく、柔らかすぎてスキーでアプローチするようなところは下りでかなり苦労する。それはスキー下手な私だけか。値段は高いが今の円高を利用すればけっこう安くなるはずだ。


















大問題が発生。プラスチックのコバが剥がれたのだ。スポルティバジャパンに修理を依頼。なんと5000円も請求され、しかもその後使用一回目で再び剥離。もう一度修理を依頼。今回はさすがにただだったが、とてもプロとは思えない汚い修理でがっかり。




トライカム


昨シーズン売り切れで入手できないほどだったのがこのトライカム。何が良いのかというと凍ったクラックで滑らない。凍ったクラックでキャメなどのカムが滑って出てきてきまらないという経験はけっこうあるが、この過去のギヤと思われていたトライカムは片側のとがった部分が食い込んでしっかりきまってくれるのだ。実際上ホロで使ってみたがすばらしい。片手でセットしにくいという点では少々慣れが必要だが、今シーズン一押し。

ワートホッグ


イボイボの愛称で日本の冬壁に欠かせないワートホッグ。草付に叩き込んで使う。うまくきまれば回収が困難なほどだが、これで落ちたことはない。回収は半時計回しで出てくるが、決まりすぎて折れることもしばしばで研いでまた使う。クロモリ製だが国産は柔らかい気がする。国産はモチヅキが製造販売していたが、ずいぶん前に製造中止。イギリスのマウンテンテクノロジーのみが製造。通販で買えるようだ。